更新日:2026年01月28日
宿便とは?出すと痩せる?
慢性便秘を解消・改善する
方法、市販薬を紹介
宿る便と書いて「宿便」。あまりお腹の中に、便など宿らせたくないものですね。なぜ、そのようなことが起きてしまうのでしょうか。宿便によってどのような症状や影響が起こるか、そもそも「便秘」と何が違うのか、解消法はあるのかなど、ここでは、それらの疑問の答えを探っていきます。しっかり対策を立て、便には連泊をご遠慮いただき、毎日すっきりと出ていってもらいましょう。
目次
監修:内藤 裕二 先生
(京都府立医科大学大学院 医学研究科 教授/
一般社団法人 日本ガットフレイル会議 理事長/
日本潰瘍学会理事長)
宿便とは? 世間的なイメージと医学用語との違い
辞書や広告などで発信されている「宿便」

国語辞典では「宿便」を、「排泄されずに腸の中に長く滞留している便」といった説明がされていることが多いようです。ただ、この説明では、通常の便秘との違いが少しわかりにくいかもしれません。
一方、健康食品の広告の記事などでは、「腸の内壁にこびりついた便や老廃物を宿便といい、その内側には狭いながらもスペースがあり便が通過できるため、便秘にはならないこともあるが、有害物質を産生して、健康や美容に悪影響が及ぶ」といった詳しい解説が加えられていることもあります。なかには、「滞留便」という言葉を使っているものも。
医学用語としての「宿便」
医学的には、宿便という、通常の便秘とは異なる状態があるとは考えられていません。
便は通常、食事から24~48時間程度で体外に排出されます。腸内に長く滞留していると思われる“宿便”が画像検査で確認されるのは、大腸憩室(大腸の内壁にできるへこみ)がある場合やバリウム検査の後などの限られたケースのみです。
日本では、古い時代に英語から日本語に訳された「宿便性●●」などの言葉が今も使われることがありますが(例えば宿便性潰瘍など)、これらは本来「糞便性(ふんべんせい)●●」というべきものであり(例えば糞便性潰瘍など)、「宿便」という言葉は医学的に定義づけられていません。
慢性便秘による悪影響
ここまで説明してきた通り、一般的に宿便とされるものは、通常の生活を送る範囲では、実はそう多くはないともいえます。その一方で、便の出が良くないという状態は、健康とはいえません。加えて、便秘がちであったり、時折お腹の張りが苦しいなど、生活上の悩みがある場合には、この機会に、便秘との付き合い方を考えてみるのも良いかもしれません。
近年の研究で、便秘は単に不快なだけでなく、便秘が長く続く「慢性便秘」では、健康に対してさまざまな悪影響を及ぼすことがわかってきています。
実際、医学的に「便秘」は、「本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便(とふんじょうべん)※1・硬便(こうべん)※2、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責(どせき)※3、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態」と定義づけられています。そして、「慢性的に続く便秘のために日常生活に支障をきたしたり、体にもさまざまな支障をきたし得る病態」は、「慢性便秘症」という治療すべき疾患(病気)とされています。
なお、医療機関で治療を受ける場合には、疾患(病気)であることを意味する「症」を付け「慢性便秘症」と診断されますが、ここでは診断を受けていない方が読まれることも想定して、これ以降は「慢性便秘」と書きます。
- ※1兎糞状便:ウサギのフンのようなコロコロとした便のこと
- ※2硬便:硬い便
- ※3怒責:いきみのこと
宿便が原因といわれることもある、慢性便秘による影響・不調

生活の質(QOL)が下がる
便秘が続くと、食欲が低下したり、お腹が張ったり、腹痛がしたり、外出が不安になったり、気分が落ち込んだりしやすいものですが、そのような症状のために、実際に日々の生活に支障が生じてしまうことを示すエビデンス(科学的根拠)があります。
例えば、日本人対象の研究では、慢性便秘の人はQOLが低く、労働生産性が低いことが報告されています。
なお、QOL(Quality of Life)とは、人間らしい生活、自分らしい生活といった意味で、日本語では「生活の質」または「人生の質」などと訳されています。つまり、便秘が続くことで、日々不快な症状に悩まされるだけでなく、生活や人生を楽しめなくなってしまうということです。
他の消化器の病気を併発しやすい
慢性便秘は、その他の消化器疾患を併発する一因にもなります。
口から肛門につながる消化管は、自律神経の働きを受けて、その機能が敏感に変化しやすいものです。そして、便秘の多くが、消化管の下部にある大腸の機能的な異常を一因として起こります。機能的な異常とは、臓器や組織に生じた構造上の異常である「器質的な異常」(例えば大腸がんは器質的な異常)の対義語で、器質的な異常はないのに臓器や組織の働きに支障が生じること。
このような消化管の機能的な異常は、食道や胃といった上部消化管にも起こります。例えば、「機能性ディスペプシア」(胃の痛みや不快感などが現れる)や「胃食道逆流症」(胸やけなどが現れる)などです。そして慢性便秘の人は、これら上部消化管の機能的異常を併発しやすい傾向のあることが知られています。
長期的な影響
慢性便秘の人は、心臓血管系の病気(心筋梗塞や狭心症など)の発症やそれによる死亡、パーキンソン病、腎臓病などのリスクが高いことも、データとして示されています。
これらのうち心臓血管系の病気については、排便時にいきむことが血管に負担をかけること、および、便秘の一因である腸内細菌のバランスの乱れによって、動脈硬化を促す物質が産生されやすくなっているためではないかと考えられています。
他にも、エビデンスはまだ十分でないものの、便秘と肌荒れや大腸がん、認知症のリスクなどとの関連を示唆する研究報告もみられます。
便秘と痔(じ)の悪循環
便秘のために便が硬くなると、排便時に肛門に負担がかかり、痔になりやすくなります。また、いったん痔になってしまうと、痛みのために排便を苦痛に感じて、便意があるのにトイレに行くのを我慢しがちになり、そのために便秘に拍車がかかってしまうということもあります。
慢性便秘が起こる原因
慢性便秘の原因となるリスク因子として、運動や食事に関すること、大腸や肛門の機能の低下、病気の影響やその治療(薬の副作用や手術の影響)、加齢、性別(女性)などが挙げられます。一つ一つみていきましょう。
運動不足

複数の疫学研究※で、運動不足が慢性便秘の発症と関連があることが示されています。
- ※疫学研究:一般の人における病気や症状の有病率、関連性のある因子などを調べる研究のこと。疫学研究のみで因果関係について断定することはできないが、関連性の有無がわかる
大腸・肛門の感覚や機能の低下
大腸や肛門の感覚や機能が低下していると、ぜん動運動(内容物〈大腸の場合は糞便〉を先へ先へと送るための筋肉の運動)が適切に起こらなかったり、便意を催さなくなったりして、便秘になりやすくなります。
少食、食物繊維の不足、水分不足
食べる量が少ないこと、なかでも食物繊維の摂取量が少ないこと、そして水分の摂取量が少ないことも、便秘のなりやすさに関係していると考えられています。
何らかの病気の影響やその治療
大腸がんなどでは大腸の内腔が狭くなるため(前述の「器質的な異常」に相当します)、便が通過しにくくなって便秘がちになります。
また、糖尿病や甲状腺の病気、パーキンソン病、メンタルヘルス疾患などでは、消化管の機能的な異常が起こりやすく、その結果として便秘がちになることがあります。
その他、病気の治療のための薬の副作用や、消化管の手術の副作用で、便秘が起こることもあります。
加齢
便秘の有病率は年齢とともに増加します。これには、加齢とともに、運動不足や大腸や肛門の機能低下が起こりやすくなること、少食になりがちなこと、他の病気も増えてくることの影響などが関係していると考えられています。
女性
便秘は女性に多いことが、多くの疫学研究で示されています。ただし、加齢とともに、性別にかかわらず便秘を訴える人の割合が高くなり、徐々に性差が狭まって、70歳以上では、男女ともに同程度になることが示されています。
慢性便秘の解消法
食事の工夫
食物繊維を摂る

食物繊維の摂取は、水分を吸収して便の‘カサ’を増やし、大腸のぜん動運動を促進したり、便を柔らかくするため、便秘改善につながると考えられています。また、腸内細菌のエサとして利用されることで、腸内の環境に良い物質が発生することも、便秘改善に役立つとされています。
ただし、食物繊維の摂りすぎによって、便の通過時間が長くなったり、ガスの産生が増えたりする可能性も指摘されているため、適度な量を摂取する必要があります。「日本人の食事摂取基準2025年版」には、食物繊維を「少なくとも1日当たり25gを摂取したほうが良いと考えられる」と記されています。
発酵食品を摂る
ヨーグルト、納豆、キムチなどの発酵食品には、腸内環境を整える働きをもつ有用菌(善玉菌)が多く含まれています。それらの善玉菌が食物繊維をエサとして分解する際に、短鎖脂肪酸という物質が作られるのですが、その短鎖脂肪酸が大腸の細胞のエネルギー源となり腸のぜん動運動を助けることなどによって、便秘改善に働きます。
水分補給
食物繊維を十分に摂っている状態で水分を多く摂ると、便が柔らかく膨張して排便が促されます。また、起床後に冷たい牛乳や冷水をコップ1杯程度飲むと、水分補給になる以外に、腸の刺激にもなって排便が促されます。
朝食を欠かさない
1日3回の規則正しい食事が、快便につながるといわれています。特に、朝食は大腸のぜん動運動の促進のために重要で、欠食しないことが大切です。
排便の習慣を整える
排便の習慣を整えるために、まずは、便意を我慢しないことが大切です。便意を我慢する習慣が長引くと、次第に便意を催しにくくなってきて、便秘がよりひどくなることもあるためです。
その上で、毎日決まった時間に排便できるように習慣づけましょう。例えば、朝食や夕食の30分ほど後に、便意がなくてもトイレに5分程度座るようにしましょう。
なお、排便のための理想的な姿勢は、洋式よりも和式トイレのしゃがむ前傾姿勢です。この姿勢では、直腸と肛門の位置関係が直線状になるため、排便に適しています。
適度な運動
適度な運動により、腸の活動が活発になります。ウォーキングなどの適度な運動を毎日継続しましょう。
なお、日々の運動量が多い人では、食物繊維の摂取量が多いほど便が柔らかいという関連がある一方で、運動量が少ない人ではそのような関連がみられないという研究結果があります。つまり、運動量が少ないと、せっかく食物繊維を多く摂っても、その効果をあまり得られない可能性があるということです。
お腹のマッサージ
腸のぜん動運動は、自律神経によってコントロールされていて、自分の意思で起こすことはできません。一方で、腸はマッサージにより、外部から刺激を与えることができます。1日15分、週5回の腹部のマッサージが、便秘の症状改善に有効という報告があります。
腸マッサージ(腸もみ)
- 1 腸の内容物の進行方向に合わせて、お腹に「の」の字を描く
- 2 脇腹をもむように上下に動かす
- 3 下腹部を押し上げるようにマッサージする

市販薬の活用
上記のように生活習慣を改善しても便秘改善が思わしくない場合には、市販薬を試してみると良いでしょう。
便秘に有効な市販薬はいろいろあり、漢方薬もその一つです。
便秘に使われる漢方薬の中で、一般的なのが「大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)」です。大黄甘草湯は、大黄と甘草という二つの生薬で構成されていて、大黄は主に腸のぜん動運動を活発にし、甘草は便意にともなって生じる痛みを緩和するように働きます。
また、酸化マグネシウムという、便秘によく用いられている薬が十分効かない患者さんでも、大黄甘草湯が有効と報告されています。
医療機関を受診
ここまでに解説した方法を試しても便秘が改善しない場合、または市販薬で改善しても服用をやめるとまた便秘になってしまうという場合、きちんと原因を確かめる必要があります。医療機関を受診するようにしてみてください。
特に、次のような事柄があてはまる場合は、より早めに受診をしてください。
セルフチェックしてみましょう。
早めに受診すべき状態
- 便に血が混ざる
- 強い腹痛をともなう
- 便通の習慣が急に変化した(初めて頑固な便秘になったなど)
- 便の性状が変わってきた(便が細くなったなど)
- 減量していないのに体重が減ってきた
- 便秘以外の症状(発熱や関節痛、貧血など)をともなう
- 便秘と下痢を繰り返す
- 以前に消化管の病気をしたことがある
- ご家族に大腸がんになった人がいる
なお、上記の内容はあくまで受診の目安であり、診断の代わりになるものではありません。気になる症状があれば放置せず、早めに受診しましょう。
“宿便”に関連するQ&A

長い間腸内に留まっている便は見た目でわかる?
見た目やにおいで判断できます。腸の通過に長時間かかると、便に含まれる水分が少なくなって硬くなります。最も顕著な場合は、便が兎糞状(ウサギの糞のようなコロコロした状態)になります。また、腐敗臭などのにおいが強くなってきます。
断食中の排便が“宿便”の証拠って本当?
“宿便”を解消するために、短期間の断食(プチ断食)が有効といわれていることがありますが、断食中の排便が宿便(排泄されずに腸の中に長く滞留している便)であったことの証拠にはなり得ません。
その理由として、宿便に対し「食事を取らないにもかかわらず排便があることが、宿便が溜まっていたことの証拠」という説明がなされていることがあります。しかし、便の成分は多くが水分で、その他に腸内細菌の死骸や腸の内壁から脱落した細胞が含まれていて、それだけでも便は形成されます。断食中でも排便があることは、健康な腸の維持のために体が行っている生理反応です。すなわち、断食中の排便が「宿便」であるというのは、誤りといえます。
“宿便”解消によるダイエットは嘘?
プチ断食で“宿便”が排泄されると体内の環境が良くなってダイエット効果も生まれるという説明を見かけることもあります。しかし、断食で体重が減るのは、食べないためにエネルギーバランスがマイナスになる(摂取エネルギー量が消費エネルギー量を下回る)ために、体内の脂肪や筋肉がエネルギー源として使われることや、排便・排尿によるものと考えられます。
つまり、単に食べない・排泄があったから痩せたのであって、宿便解消の波及効果ではないと考えたほうが自然です。
なお、ダイエットにおいては、断食または食事の量を減らすのみの減量では、脂肪量だけでなく除脂肪量(主に筋肉の量)も減ってしまい、代謝面などへ負の影響が生じることがあります。健康的な減量には、バランスの良い食事と、筋力トレーニングも並行して行うことが欠かせません。
“宿便”かどうかにかかわらず、便秘はしっかり治療しましょう

“宿便”という言葉は、大腸の中に便がこびりついた状態をイメージさせ、体に悪そうな感じがします。ただし医学的には、宿便(排泄されずに腸の中に長く滞留している便)にあたるような状態は、大腸憩室(大腸の内壁にできるへこみ)がある場合などを除いて、通常の生活の範囲では認められません。とはいえ、大腸の中に便が、通常より長く滞留していることが、体にさまざまな悪影響を及ぼすことは確かです。「たかが便秘」と侮らず、ここで紹介した解消法を試してみてください。
生活習慣を改善したり市販薬を使ったりしても改善しない場合は、早めに診察を受けて原因を確かめてもらい、きちんと治療しましょう。
参考
- 日本消化管学会編集「便通異常症診療ガイドライン 2023――慢性便秘症」
便秘のお役立ち情報
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